海外で迎える新年
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2020年1月
クリスマスにトルコ入りして年末年始を海外で迎えた。
海外でお正月を迎えるのは2000年以降なんと20年ぶり。
忘れもしない。
その昔、ジュネーブのホテルで新年を迎えたのだった。
思い起こせば、この時が私にとってアジア圏以外での初の海外旅行だった。
1999年のクリスマスイブに日本を出発してロンドン→ローマ→フランクフルト→ジュネーブ→パリと周遊して回った。
当時はユーロがなかったので、国境のたびに両替を繰り返し、あわただしい旅だった。
確か日本旅行のグループツアーだった。
日本航空の直行便で成田→ヒースロー間がダブルブッキングの為ビジネスクラスにアップグレードされた。
ツアーガイドさんが
「みなさーん。アップグレードです~」
と道頓堀のグリコみたいなポーズでチェックインカウンターから走ってきたのをよく覚えている。
私はそもそも長距離フライト自体初めてだったので、それがどんなにラッキーなことかさっぱりわからなかったのだ。
実際乗っては見たものの、座席も広いし食事も普通にレストランみたいだし、快適だな、とは思ったが、長距離路線はこれがデフォルトなのだろうとさして不思議にも思っていなかった。
そして帰りにエコノミーに乗ってみてその差に愕然としたものだ。
観光バスと変わらない座席の狭さと、給食みたいな質素な食事。
この段階で、ガイドさんが走り回るほどうれしがってた理由をようやく理解した。
私は人生のかなりの量の運をこの時点で使ってしまったかもしれない。
あれから20年。
この旅行をきっかけに、私は毎年、年に一度の海外旅行をささやかな楽しみに、仕事に励むようになっていた。
奇しくも20年後、私は日本を離れ、異国の地に居住しようと旅立った。
本当に偶然ではあるのだが、それは2019年のクリスマスイブの事だった。
図ったかのように、それはきっかり20年後の事なのだ。
クリスマス当日にトルコに到着したはずなのに、ちっともクリスマスの雰囲気が無かった。
イスラムの国だからなのかな?
と思って気にしていなかったのだが、後で理由が分かった。
トルコのクリスマスは大晦日だったのだ。
トルコではクリスマスを「ノエル」と呼ぶ。
オアシスのノエルギャラガーが好きな私はついつい彼のつながった眉毛を想像してしまった。
そういえば、トルコ人の男性も眉毛がつながった人が多い。
日本人の顔ってなんてあっさりしてるんだろうと、私は自分の素朴な顔を見てつくづくそう思う。
まあ、なにはさておき、眉毛のつながった人がたくさんいる国で、眉毛がつながったミュージシャンの名を持つお祭りがいよいよ始まる。
ちなみにサンタクロースは「クリスマスのお父さん」
という意味のトルコ語「ノエルババ」と呼ばれている。
日本の大晦日のように厳かではなく、欧米のクリスマスのように豪華でもない。
ケーキとチキンを食べ、男性が女性に花束を贈る。
それだけのシンプルな行事である。
まあ、あくまでも異教徒のイベントだからさらっと流しておく程度なのだろうと想像した。
エフェスおじさんは夕方に私のホテルに現れて、義理堅くもケーキと花を差し入れてくれて、慌ただしく自宅へ帰っていった。
その夜私はクシャダスの街でカウントダウンライブを楽しんだ。